道路使用許可の申請適格

 このページでは道路使用許可の申請適格について説明しています。

 「適格」というのは、法律用語で、法律になじみの薄い方にはわかりにくいかもしれません。

 簡単に表現してしまえば、「道路使用許可を申請できる資格」「道路使用許可を申請できる人」のような意味です。

 少し難しいですが、「道路使用許可申請を申請できる人」について、このページで網羅しています。

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このページのまとめ

 このページは道路使用許可申請を専門とする国家資格者である行政書士が丁寧に説明していますので少し難しいかもしれません。

 最初にこのページのまとめを説明すると、ポイントは以下の5点です。

  • 道路使用許可申請ができるのは、工事や作業を行う事業者である。
  • 工事や作業を請け負った事業者は、請け負った範囲で道路使用許可申請ができる。
  • 工事や作業を行う従業員個人では申請できない。
  • 工事関係車両のレンタルを行う事業者や警備業者が道路使用許可申請を代行することはできない。
  • 道路使用許可申請の代理、代行ができるのは国家資格者である行政書士に限られる。

 それではこの5点を中心に詳しく説明していきます。

道路使用許可の申請適格

 道路使用許可の申請適格、どのような人が道路使用許可を申請できるかについては、道路交通法(1960年(昭和35年)法律第105号)第77条第1項に定められています。

 道路交通法第77条第1項では1号から4号にわたって、道路使用許可申請を受けなければならない場合を列記していますが、このページでは道路交通法第77条第1項第1号に絞って、道路使用許可の申請適格、どのような人が道路使用許可を申請できるかについて説明します。

道路交通法第77条第1項第1号

 ではまず、道路交通法第77条第1項第1号を見てみることにします。

道路交通法第77条第1項第1号

道路において工事若しくは作業をしようとする者又は当該工事若しくは作業の請負人

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=335AC0000000105

 この法律の条文では

  1. 道路において工事、もしくは作業をしようとする者
  2. 当該工事、もしくは作業の請負人

 の2つが挙げられていることがわかります。

 それではこの2つについて分析します。

道路において工事、もしくは作業をしようとする者

工事または作業をしようとする意思の主体

 ここで、「工事、もしくは作業をしようとする者」とは、「工事または作業をしようとする意思の主体」のことをいうとされています(1963年(昭和38年)11月7日・和歌山簡易裁判所判決)。

 つまり、「実際に工事や作業に従事する者」(例えば、社員、従業員など)や、「工事または作業の注文者、依頼者」のことではありません。

 「いきなりなんだか難しいぞ、わからないぞ」という方もいらっしゃるかもしれませんが、具体的な事例を考えてみましょう。

 道路使用許可申請書を作成したことがある方や、道路使用許可証をご覧になったことがある方はおわかりかと思いますが、道路使用許可申請書や道路使用許可証の右上にある「申請者」の欄には、「工事や作業を行う会社の社員、従業員の個人名」や「工事や作業の注文者、依頼者」を記載しませんよね。

 道路使用許可申請書や道路使用許可証の右上にある「申請者」の欄は、「工事や作業を行う会社、事業者」の名義になっています。

 簡単にまとめてしまえば、「道路において工事、もしくは作業をしようとする者」とは「工事または作業をしようとする意思の主体」、つまり、「工事や作業を行う会社、事業者」のことを言います。

具体例

 もっとわかりやすくするために、具体例を考えてみます。

建物を新築するための工事、作業の場合

 Aさんがマイホームを新築するために、建設会社、工務店の「株式会社B」に建築を依頼したとします。

 建物を建築する場合には、基礎の生コン作業、建方作業、レッカー作業、足場の設置作業、足場の解体作業、資機材の搬出入作業、高所作業車を使用した高所作業など、多くの作業が必要になります。

 このとき、道路使用許可申請をするのは、Aさんでも、株式会社Bの社員個人でもなく、工事や作業を行う「株式会社B」になります。

 ですから、道路使用許可申請書の右上の「申請者」の欄には「株式会社B、代表取締役C」と記入して申請します。

 道路使用許可が得られるのは「株式会社B」になります。

 このとき、株式会社Bの社員、従業員のDさんが、Dさんの個人名で申請することはできません。

 あくまで、工事や作業を行う意思の主体である「株式会社B」が道路使用許可を申請し、「株式会社B」が道路使用許可を得られることとなります。

店舗改修工事のための工事、作業の場合

 今度は、「株式会社E」が運営している店舗の改修工事を「株式会社F」に依頼したとします。

 店舗の改修工事の場合には、資機材の搬出入作業、高所作業車を使用した高所作業、歩道にはしごを置いて行う作業など多くの作業があると思います。

 このとき、道路使用許可申請をするのは、株式会社Eでも、株式会社Fの社員個人でもなく、工事や作業を行う「株式会社F」になります。

 ですから、道路使用許可申請書の右上の「申請者」の欄には「株式会社F、代表取締役G」と記入して申請します。

 道路使用許可が得られるのは「株式会社F」になります。

 このとき、株式会社Fの社員、従業員のHさんが、Hさんの個人名で申請することはできません。

 あくまで、工事や作業を行う意思の主体である「株式会社F」が道路使用許可を申請し、「株式会社F」が道路使用許可を得られることとなります。

当該工事、もしくは作業の請負人

請負契約とは

 「請負契約」については、民法(1896年(明治29年)法律第89号)第632条に規定されています。

民法第632条

請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089

 請負契約を簡単に説明すれば、「ある仕事の完成を約束して、契約の相手方からその仕事の結果に対して報酬を受ける契約」です。

 もっと簡単に説明してしまえば「仕事を完成させるので、報酬を支払ってね」という契約です。

工事または作業をしようとする意思の主体の請負人

 さて、ここで道路使用許可の話しに戻ります。

 先ほどの「工事または作業をしようとする意思の主体」が、この工事または作業を他の事業者に請け負わせた場合には、この請負人も道路使用許可申請ができることとなります。

具体例

 ここでもまた具体例を考えてみます。

道路の共同溝の工事、作業の場合

 道路の共同溝の埋設工事を行う場合、株式会社Aが受注し、これを株式会社Bに請け負わせた場合には、請負人である株式会社Bも道路使用許可申請ができることとなります。

 もちろん、この場合、株式会社Aも先ほどの「工事または作業をしようとする意思の主体」として道路使用許可申請ができます。

 ここで、ポイントとなるのは、「工事や作業を複数の事業者に分担して請け負わせた場合」には「工事の全体を掌握できない」ために「工事や作業の請負人」とはならないことです。

 具体例を検討します。

 株式会社Aが道路の共同溝の埋設工事を受注し、「道路の穴掘り作業を株式会社C」「共同溝の築造を株式会社D」「ケーブルの埋設を株式会社E」「ガス管の埋設をF」に請け負わせた場合を考えてみます。

 このとき、「共同溝の埋設工事」についての全容を把握しているのは工事を受注した株式会社Aだけです。

 他の会社は「共同溝の埋設工事」の全体を掌握することができません。

 このような場合、「共同溝の埋設工事」について道路使用許可申請ができるのは株式会社Aだけになります。

 請負人である株式会社Cは自社が請け負った「道路の穴掘り作業」、株式会社Dは自社が請け負った「共同溝の築造作業」、株式会社Eは自社が請け負った「ケーブルの埋設作業」、株式会社Fは自社が請け負った「ガス管の埋設作業」の道路使用許可申請ができるだけになります。

店舗改修工事のための工事、作業の場合

 今度は、「株式会社G」が運営している店舗の改修工事を「株式会社H」に依頼したとします。

 先ほども例に出しましたが、店舗の改修工事の場合には、資機材の搬出入作業、高所作業車を使用した高所作業、歩道にはしごを置いて行う作業など多くの作業があると思います。

 このとき、工事を受注した株式会社Hが、分担して作業を請け負わせた場合、それぞれの事業者が道路使用許可申請できるのは自社が請け負った作業だけになります。

 例えばクロスの張り替え作業を請け負った株式会社Iは「クロスの張り替え作業のための資材搬出入」、高所作業を請け負った株式会社Jは「高所作業車による作業」、足場設置工事を請け負った株式会社Kは「足場の設置、解体作業」の道路使用許可申請ができるだけになります。

道路使用許可申請ができない場合

 以上のように、道路使用許可の申請適格がある、つまり道路使用許可申請ができるのは「道路において工事若しくは作業をしようとする者又は当該工事若しくは作業の請負人」に限られます。

 逆に、これ以外の人は道路使用許可の申請適格が無い、つまり道路使用許可申請ができないことになります。

 道路使用許可の申請適格が無い場合、道路使用許可申請できない人を具体的に検討してみます。

工事関係車両のレンタルを行う事業者

 工事関係車両のレンタルを行う事業者は、道路交通法第77条第1項第1号の要件を満たさず、道路使用許可の申請適格がありません。

 つまり、工事関係車両のレンタルを行う事業者は道路使用許可申請をすることはできません。

 例えば、工事や作業で使用する高所作業車やレッカー車、クレーン車などの工事関係車両をレンタルする会社は、道路使用許可申請をすることはできません。

 道路使用許可申請書の右上の申請者を、工事や作業で使用する高所作業車やレッカー車、クレーン車などの工事関係車両をレンタルする会社の名義で申請することは、道路交通法第77条第1項第1号の要件を満たさないので認められません。

このような行為は違法です

 ごく一部の悪質な業者は、道路交通法に違反して、工事関係車両のレンタルを行う事業者の名義で道路使用許可申請を行う事例があるようです。

 例えば、高所作業車のレンタル業者や、クレーン車のレンタル業者が、レンタル業者の名義で道路使用許可申請を行う場合があるようです。

 しかし、このような申請は道路交通法第77条第1項第1号違反となるので認められません。

 このような違法な申請をする事業者はごくごく限られた一部ですが、このような申請は認められません。

 違法行為となりますので、このような申請を行う悪質な事業者と契約なさることはお勧めしません。

警備業者

 道路使用許可を得て、工事や作業を行うには交通誘導員、ガードマン、警備員の配置が不可欠です。

 このとき、交通誘導員、ガードマン、警備員の派遣会社に依頼して現場に来てもらうことが通例ですが、交通誘導員、ガードマン、警備員を派遣する警備業者は道路使用許可申請をすることはできません。

 道路使用許可申請書の右上の申請者を、警備業者の名義申請することは、道路交通法第77条第1項第1号の要件を満たさないので認められません。

行政書士法による制限

 では、道路使用許可申請書の右上の申請者を、工事や作業を行う事業者の名義にして、工事関係車両のレンタルを行う事業者や警備業者が行うことはできるでしょうか。

 このような行為は行政書士法により、行政書士の国家資格が無ければ行うことはできません。

 違反した場合は行政書士法により刑罰を科せられる場合もあるので注意が必要です。

このような行為は違法です

 ごく一部の悪質な工事関係車両のレンタルを行う事業者や、警備業者は、道路使用許可申請の代理、代行をする事例があるようです。

 しかし、このような申請は行政書士法違反となり、いわゆる「非行行為」として刑罰の対象となります。

 違法行為となりますので、このような申請を行う悪質な事業者と契約なさることはお勧めしません。

道路使用許可の申請適格・道路使用許可申請ができる人のまとめ

 以上のように、道路使用許可の申請適格・道路使用許可申請ができる人については道路交通法で厳密に定められています。

 簡単にまとめれば

  • 道路使用許可申請ができるのは、工事や作業を行う事業者である。
  • 工事や作業を請け負った事業者は、請け負った範囲で道路使用許可申請ができる。
  • 工事や作業を行う従業員個人では申請できない。
  • 工事関係車両のレンタルを行う事業者や警備業者が道路使用許可申請を代行することはできない。
  • 道路使用許可申請の代理、代行ができるのは国家資格者である行政書士に限られる。

 の5点を覚えていただければ十分だと思います。

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